圧倒的な存在感とパワーをもつ実力派ロック・バンド、PINKが待望のセカンド・アルバムを完成させた。タイトルは『光の子』、2月25日に発売される。さて、今回はどんなサウンドを聴かせてくれるのだろうか。音響ハウスでミックス・ダウン中の福岡、岡野、矢壁の三氏に、レコーディングの状況とアルバムの内容について語っていただいた。

前作の内相的な部分に、少し風穴をあけてみたんだ

―――録音は順調に進みましたか?

福岡 途中でライヴが入ったりしたもんで、スケジュール的にはメチャクチャしした。それに今回はデモ・テープなしでリハーサルやって、いきなりレコーディング・・・・・つまり昔のロック・バンドですよ。だからスタジオ入ってからも試行錯誤の繰り返しでしたね。

―――全体的なコンセプトを教えて下さい。

福岡 前作(1st.アルバム)がどちらかというと内証的というか、暗い部分に目を向けた曲が多かったんで、今回はもうちょっと幅をもたせてポップでカラフルな面を出していこうという感じ。

岡野 ポップになるということに別に苦労はないんですよ、僕らは。もともと、ポップであるということが条件だと思ってたしね。だから曲作りの段階からポップなものを意識してましたよ。

福岡 とりあえずバンドの本質というのは1枚目で出てると思うのね。そこをもう1回やっても内証的にはまり込むだけだろうし、そこにちょっと風穴をあけてみようと思って。1枚目からそうしちゃうとまとまりがつかなかったろうけどね。でも、またしばらくしたらその内証的な部分をグッと出したアルバムを作りますよ。

―――同期モノを使った曲も多いんですか?

福岡 いわゆるテクノっぽいものはないですね。リズム・マシンはけっこう使ってるけど。

矢壁 それなりに最低限のものは使ってる。でも前からそうなんだけど、わからないみたいですね、リズム・マシンの音の出方が・・・・・。

岡野 カメ(矢壁氏のニックネーム)のビートがドンカマっぽいというか、ジャストのノリしてるからね。

福岡 ノリはあんまり変わんないけど、彼が叩くと迫力が全然違うんだよね。

矢壁 今回も、リズム・マシンで全部録ったけどやっぱりよくなくて・・・・・みたいな曲もけっこうありましたよ。音的にも生音の良さを出すよう、ちょっと頑張ってみました。

―――ライヴな音かな?

矢壁 もちろんそれも考えたし、とにかくできるだけ”ドラムの前で聴いてる音”というのを録りたいなと思って。

岡野 部屋鳴りはしてるんだけど、ヌケが良いという、けっこう裏腹な部分だよね。まあその辺はどこのバンドも苦労しているところだろうけどね。

 

音作りの注文はメチャクチャ細かいよ

―――PCM-3324がスタジオに入ってたんですが、今回はデジタル録音ですか?

福岡 ウン、数曲はネ・・・・(含み笑)。

岡野 いや、あれはスレーヴ用で・・・・・つまんないウソつかないでよ(笑)。

矢壁 単にアナログのスレーヴ用マルチがなかっただけの話。まだデジタル録音てあまり好きになれない。というのは卓もデジタルでないとそう意味がないような気がするもんでね。ピンポンしても音が悪くならないっていうけど、1回卓を通るわけでしょ?だったら、ネェ。

―――エンジニアリングに関しても、皆さんかなりうるさそうですね。

福岡 自分達で卓までいじっちゃってます。

岡野 まあ、いじるというかエンジニアの方と相談ですよね。だからコミュニケーションとるのに、すごく時間がかかる。

矢壁 たとえば普通だと「スネアの音をカタくして」とか「ハデにして」というところを、僕らだと「ゲートかけて、AMSの何番を切って、2kを何dB上げて・・・・・」とかいっちゃうんです。

岡野 扱いにくいバンドだと思いますよ(笑)。

―――ミックス・ダウン時なんか大変でしょうね。

岡野 最終的な音の判断を出すのはリーダーのエンちゃん(福岡氏のニックネーム)だから、いかにそこにもっていくかということですね。

福岡 その判断というのは、とにかくヌケた音が出てくれば両手上げてピース!という感じ。その続出を望みたいんだけどね(笑)。

岡野 エンちゃんの思っている音というのはリバーブがかかってるのかもしれないし、ディレイかもしれないし、それは出てみないとわからないわけ。音が出て、”アッ、コレ”というものだから、そういう要素の音をたくさん用意しといて、短時間でパッパッと聴かせなくてはいけない。そういう体制って、良いレコードを作るのにとても大切なことだと思うけどね。

―――『光の子』というタイトルは面白いですね。

福岡 最初は『ラヴ・トゥリーズ』にしようと考えてたんです。カラフルさを出すにはその方が合ってると思って。でも『光の子』の方がスピーディーだし、ちょっと攻撃的でしょ。アルバム全体のコンセプトとしては『ラヴ・トゥリーズ』として捉えた方がいいかもしれないけど、別にそこまで一貫性を出す必要もないしね。今は音楽的にもそこまでの流行の音というのがなくなってきてるでしょう。ちょっと前のヒップ・ポップあたりでとどめを刺した感じで・・・・・。やっぱり、そういう方法論に面白さを求めるよりも、メロディとかそういう基本的な部分を、どう自分の中でイメージとして織りなしていくか・・・・・その辺が重要なんじゃないですか。

(photos by T.Yamaguchi)

「サウンド&レコーディング・マガジン」1986年2月号掲載

前列中央はエンジニアの寺田康彦氏