今通ともたか、松浦雅也、岡野ハジメ、三者三様の新しさ


「ソロも出来て、歌心のわかるサウンド・メーカーでもあって、プロデュースもやるバンドマンを探せ!」
という「元気の出るテレビ」的なお題目が、今回の私の使命であった(「スパイ大作戦」て何度見てもスキだな~)。

時代が変わったものだな~、といきなり私は感慨に耽る。ムカシだったら、バンドマンにアレンジだのプロデュースだの要求するようなことはなかった。あっても稀だった。ソロ・アルバムを作るなんて言ったら、裏切り者呼ばわりされたものだ。そして「○○は解散か?」なんて噂がまことしやかに流れるというのがパターンだった。
それがどうだ。いまではソロやプロデュースのひとつも出来なければ、半人前みたいな扱いをされてしまう。バンドマンも忙しい仕事になったものである。

しかし、そういうことを軽く(かどうかは知らないが)やってしまう人が増えたのは事実。もちろんその流れには、サウンドの緻密さや色付けが重視されたり、プロデュースという作業が大きな比重を持ってきたことなどが考えられる。外国だとエンジニアあがりのサウンド・プロデューサーが多かったりするが、日本の場合、エンジニアの地位(と技術)がまだそこまで向上してないせいか、サウンド・プロデューサーとして現役ミュージシャンが参加するレコード制作が多いのは、皆さんご存知の通り。

それがバンドのありようにどう影響するのか?今さらムーンライダーズの皆さんにそんなことをお伺いしてもナニですし、ここはやっぱり若い衆にこれからの展望をきいてみようじゃないか、つうことになったわけだが、そうなると編集部の要求をすべて満たす人というのは、なかなか難しい。で、「・・・・・の可能性のある」3人に今回は登場してもらうことになった。この他にも名前の挙がった人が何人かいたのだが、スケジュールの都合などで次回(たっていつになるかわかんないが近いうちに)ということにして、まずはこの人、巨大化した月刊『宝島』の表紙を飾り一風変わった存在感を出している、バービー・ボーイズのギタリスト今通(いまみち)ともたかだ。

 

●ケース1・今通ともたか

バービー・ボーイズは85年の初めにデビューした5人組で、キョーコ(Vo)、コンタ(VO,S)、コイソ(ds)、エンリケ(b)にイマサこと今通のギターが入る。男女ヴォーカルの掛け合いで擦れ違いラヴ・ソングを歌い、ライヴでけっこうな盛り上がりを見せてきたが、86年の秋、3作目を発表し、11月17日、日本武道館初体験。ヒット・チャートに載るほどではなく、輪島のように話題になるキメ技(たとえばインディーズ出身とか)もなかったせいか、本誌編集部内でも彼らの武道館公演は驚きだったようだ。

彼らのサウンドは一度聴いたら忘れられない色を持っている。コンタとキョーコは同じようなハスキー・ヴォイスで、キーもそれほど違わない。そこにかん高いソプラノ・サックスを入れ、ギターがからむ。キンキンと神経質な印象を撒き散らすのだ。それが歌にあっているから不思議というか、強いインパクトを感じさせる。アレンジは全員でやるそうだが、コンロトールしているのは今通。

「とにかく、俺はソロは弾かないギタリストでいこうと思ったわけ。最初はね。それでソロを弾かないかわりに、ソロ楽器をコンタにやらせようと思ったわけ。でさ、当然、曲の感じからしてギター・ソロってとこにアイツがサックスでソロを吹いて、それってとってもガクってくる感じでいいなあとか思ってさ(笑)。ただ普通の人の感覚からすると、合うはずないってだけ。音域が似通ってる。アイツの声とサックスが似通ってて、俺の出すギターと似通ってて、全部似たようなところでワァッとあって。普通だったら避けるんだよね。その合間を埋めるんでシンセ使ったりするんだけど、それを敢えて、これだっていいじゃんコントンとしててって」

サックス導入のヒントになったのはメン・アット・ワークやヘアカット100だったが、「だからといって、ああいう音にはならなかったねえ」
彼らは曲ができ、それからサウンドを組み立てるという方法が崩せない。バンドにありがちな、全員のセッションからコード進行を決めて曲を作っていくことはないそうだ。

「うちら全員、ブルースに馴染みがないんだよね。あの感覚がない。決まったコードに突飛なメロディーがのってないと恥ずかしい。逆に突飛なメロディーに敢えて昔からあるような黄金のコード進行を無理やり押し込めるってのはよくするけど」

曲は殆ど彼が書く。それを「メモ・テープ」にしてメンバーとアレンジ。
「譜面で書くとややこしいんだけど、一瞬のことだから、聴いてる分にはバレない、カッコいいって。そういうのがなんかスリリングでいいみたい。レコーディングの時は特にそう。聴いてよければすべてよし、なの」

ギタリストとしては音色(ねいろ)派だという彼は、デビュー当時はイギリスのバンドを思わせる鋭角的なギターを弾いていたが、最近作ではもう少しダイナミックな演奏に変わってきた。
「バービーの中じゃ自分の音って出たみたいね」という自信が外に目をむけさせたのか、次に紹介する松浦雅也とのセッションを経験した。それは松浦の番組のためのもので、今通の曲にサイズのチャカが詞を付け、松浦がアレンジした。バンドではかたくなにシンセ等を拒否してきた彼の曲に初めてシンセでのオーケストラがついた。
「(バンドじゃなかったから)だからよかったんだろうね。俺の曲って音つめすぎちゃうと、っていうか立派になりすぎるとありふれるじゃない」
妙に悟っているところが大器っぽい。


PSY・S&いまみちともたか「サイレント・ソング」


PSY・S&いまみちともたか「Wondering up and down~水のマージナル」

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