『PINK』、『光の子』とアルバムごとに急激な成長を見せるPINK。単なるグループの域を越えたハイ・テクニカルなプロフェッショナルな集団である彼等は、現在3枚目のアルバムをレコーディング中。しかも、これを契機に、また大胆かつ新たなアプローチを展開してくれそうだ。今回はそのPINKのベーシストであり、その一方ではウィラードやちわきまゆみのプロデューサーとして活躍中の、岡野ハジメにインタビューした。


ニューアルバムのテーマは ”よりデリシャスに、よりポップに”

「現時点(9月10日)でアルバムのレコーディングは80%終わったというところかナ。今回はレコーディングとトラック・ダウンをほぼ並行してやっているんだ。今回は前回までとはやり方を変えて、合間にブレイクを入れながらジックリやってる。何しろ6月下旬から始めて、未だに終わっていないんだから。もちろんこれは前々から計画していたことだけどネ。」

PINKのニュー・シングル「Keep Your View b/w Electric Message」(マクセルのVTRカセットCFソング)が11月28日に、アルバム『Psycho-Delicious(仮)』は、来年1月25日にリリースされる予定だ。また、ゲストには自主制作CDを発表した吉田美奈子が作詞とコーラスで、さらに板倉文、パール兄弟の窪田晴男といったギタリストが参加している。

「今回13曲ほどレコーディングしてるんだけど、最終的には9曲にしぼりこむつもり。特に今回はドラムのカメ(矢壁アツノブ)と、シンプルかつ強いリズム・セクションを作るのに成功している。これは全員に言えることだけど、個々のパートを作るのに各自の感覚にまかせたというところがあるんだ。良い意味で無責任。決めるべきことは前もって決めてあるし、この方がよりバンド的なやり方だと思うんだ。」

”よりデリシャスに、よりポップに” をテーマに、ニュー・アルバム作りを行っているPINK。岡野ハジメ自身「メンバー全員がつねに立ちあっているわけじゃない」と言っているが、それでもPINKならではの音楽性が、日ごとに固まり、深くなってきている。これもPINKだからこそなせることかもしれない。

「全員がPINKがどうであるべきか、どうなるべきかは知りつくしているからネ。それ以外はあまり細かいことを気にしても仕方ないと思うんだ。それを証明するように今度のアルバムは前にも増してポップだし、バラエティに富んでいる。やるべきことをちゃんと実現させているんだ」

 

ロンドンでのギグ、BBCのためのライブ収録と意欲的な活動が続く

そのPINKが、レコーディングの合間をぬって、10月初旬よりイギリスに渡る。目的はロンドンのクラブ”Busbys”でのギグだ。

「ロンドンには10日間滞在。今回行くのは初めてだし、憧れの国でもあるから楽しみなんだ。僕はPINKっていうのは、とても日本的だと思ってる。そんなPINKに対して、イギリス人がどう反応するか興味あるネ」

その他にもPINKのメンバーは立ちあわないが、「Soul Flight」(英語バージョン)と「Young Genius」の2曲を、JAPANのプロデューサーとして知られるスティーブ・ナイの手によってリミックスされることになっている。もちろんこれはシングルとして、イギリスでもアフェア・レコードよりリリースされることになっているのだ。

「スティーブ・ナイの他にも、ルパート・ハインやスティーブ・リリィホワイトなどたくさんの名前があがったけど、結局金額的なこと、時間的なことなどから判断して、彼に決まったんだ。果たしてどんなものになるだろうネ」

さらにPINKは、イギリスから帰国後の10月18日、イギリスのBBCテレビの特番のためのライブを日本で収録。そしてレコーディング終了後の12月には数回のコンサートを行ない、来年2月からの全国ツアーもすでに決定している。とにかく凄まじいスケジュールだ。

 

ウィラード、ちわきまゆみなどプロデュース活動も充実

また、岡野ハジメはと並行して、プロデュース活動の方も忙しい。彼がプロデュースしたインディーズの出身のウィラードのアルバム「フー・シングス・ア・グローリア?」は、早くもヒット中。つい最近もちわきまゆみの12インチ・マグナム・シングル(11月発売予定)をプロデュースしたばかりだ。

「ウィラードでは、僕がしばしば忘れていたようなものを改めて感じとれた。全て満足はしていないけど、彼等の持つカッコ良さをそのままの形で出せたから納得はしてる。ちわきの今度のレコードもイイです。プロデュースっていうのは自分に色々な刺激を与えてくれるからおもしろいヨ」

(文/山田道成)

「TECHII」1986年11月号

※サイト「TECHNOLOGYPOPS π3.14」様より、貴重な記事データをご提供いただきました。


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