1月15日。東京目黒の鹿鳴館で行われた<東京フリークス>のコンサートで、ビブラトーンズを見た。近田春夫の巧みな喋りとバンドの強力なバイブレーションにあおられ気味の聴衆は、一曲目からダンス、ダンス。途中、客席の成人式帰りのふりそで姿のお嬢さん、チエちゃんとトモコちゃんを舞台に招いて祝福の三本ジメをやることになった。二階席にいた外人客に向かって、「ガイジンの方もよろしくおねがいします。クラップ・ハンド、ユー・ノウ」と近田春夫が話しかけた姿は、あの鹿鳴館時代の国際交流もかくやありなんと、往時をしのばせるような、そんな一幕もある楽しいステージだった。
演奏のまとまりのよさ、見せる楽しさ、ノせるパワー、そのいずれにおいても、ビブラトーンズのステージは、80年代に入ってからぼくが東京のライブハウスで見たバンドのなかで、文字通り最高のエンターテインメントであった。この楽しさが、いまだにごく一部のファンにしか知られていないのが不思議でならない。おそらく誰かが、彼らのステージのあまりの楽しさに、ひそかに自分たちだけの愉悦のためにしばらく隠したままにしておくよう暗躍しているのではないかと思いたくなるほど。その素晴らしさについて書きはじめると、プレイヤー誌の紙面があっというまに埋まってしまい、それに費やす鉛筆は百万本を越えることだろう。ビブラトーンズは、それくらいダイレクトなパワーを持った、バンドである。

コンサート終了後、鹿鳴館の楽屋でメンバーにインタビューをした。ごぞんじの方もあるだろうが、あらためてメンバーご紹介。

近田春夫:ボーカル、キーボード
ヨースケ(岡田陽助):ギター、コーラス
ヨネ(矢野ヨネ):キーボード、コーラス
タケ(小早川ぜんべえ):ベース、コーラス
カメ(やかべカメオ):ドラム、コーラス
エンジン(土肥座円陣):ボーカル、パーカッション

写真を見てもらえばわかるように、メンバー全員なかなかのバイブレーションの持主である。特にパーカッションのエンジン氏などそのバイブレーションにうたれておばあさんの腰が伸びた、と言われてもすんなり信じられるほど、もうほとんど奇蹟的なものを感じさせる。でも、以下を読んでもらえばわかるように、みなさん、とってもバランス感覚豊かな人たちである。

(おことわり:メンバーの声がテープでからまりあって明確に聞きとれないため、近田、エンジン両氏以外の話は、誰の声だかハッキリしなかった。発信者名に多少誤りがあるかもしれないので、読者の皆様とメンバーの皆様、その点どうかご容赦を)

 

”恋の晩だな”

実は、今日、はじめてステージを見たんですが、レコードから想像していたのより、ずっと楽しいステージでした。デビューしたころからこんなに楽しかったんですか。

ヨースケ:最初から絵づらを考えてやっていこうというアレがあったから。
エンジン:ダンス・バンドだから。みんな踊ればいいという感じで。
ヨースケ:楽器を持って踊るという。
カメ:レコードで想像していたより楽しかったというと、レコードではどういう感じだったんですか。

去年の11月に出た4曲入り45回転盤「バイブラ・ロック」を聞くと、デビューLPより、サウンド作りがシリアスになってたから。

エンジン:でも、あれ、わりとラクに作ったつもりなんだよね。

音楽専門誌の評を見ると、ススンでるとか、新しいことをやってる、というニュアンスの記事を読んできたもので。

近田:そういうの、ないんだけど。
エンジン:へえーっ、そういうのあるの(?)
ヨネ:意外だったな。

「ロックの最先端を行ってる」みたいな評がね、多いんですよ。

全員:ガハハハハハ! それはあたってる。ガハハハ。

それで、ひょっとしたらステージもムツカシいんじゃないかという先入観が・・・。

エンジン:歌詞で暗い部分があると言われるんならわかるんだけど、演奏でシリアスだと言われたのは、はじめてだよね。
タケ:今度のレコードは、3~4か月ライブでやってた曲を、あんまりいじらないでレコードにしたんです。だからライブぽいと思うんですよね。
近田:最近わりとオーソドックスに「ロックとは何か」みたいな感じでやってるね。
ヨースケ:リズムはほとんどいっぱつ録りでそんなにダビングしてない。
カメ:リズムの録りかたで、トラック数を沢山使ったけど。
タケ:ベースに2トラック使ったりとか。

アレンジはどういうふうに決めるの。

カメ:だいたい、誰かが骨組みを持ってきてそれにみんな肉付けしていく感じで。
エンジン:声の大きい人がイニシアティブをとって(笑)、それは曲をもってきた人の場合が多いね。

曲作りは誰が。

近田:オレだけじゃなくみんな作る。練習してるうちに淘汰されてく。歌詞はぼくがシンになって作るけど、結局、みんなの意見が入ってくるから、最終的にはバンドのものですね。みんな自分がいちばんエラいと思ってるけど(笑)。

 

>>近田春夫とVIBRA-TONES(2)へ続く