●うれしい! とかく内向的に見られがちだった(?)PINKの5人が、全国ツアーに飛びだしたのだ。2月24日・横浜からスタートした全国ツアーは4月5日・中野サンプラザ公演を含む10か所。見逃してられないライブの迫力と素顔の魅力をご紹介ッ!
(撮影・管野秀夫 文・野中智美)

結局、”なんだかんだいっても”なのだ。”なんだかんだいっても”音を感じるのは感覚で、正直なところそれに頼るしかない。いくら言葉で、理論で、前置きでわかっていても。感覚が「コレだ!」と受け付けなければ始まらない。
PINKには”なんだかんだ”と肯定事実をたくさんいえる。なぜなら音のよさもテクもセンスも折り紙つきだ。けれど、だからこそ、の不幸を背負う。それだけでかたづけられてしまう、という不幸。そのためにも、コンサートで、感覚を体に焼きつけてほしい。体を動かすのは能書きではなく音そのもの、だ。

2月24日。ヨコハマの駅前はいつでもクリスマスのように賑やかだ。なぜなら多くの街路樹とビルの壁面が多くの電球で彩られている。豪華電飾世界。が、この中の1つのビルの上ではもっとはでなことが用意されている。
金属的なパーカッションの音色とともにメンバーが登場する。歓声が、アッという間にダンスの揺れに変わる。「NAKED CHILD」。オープニングから煽動するようなはでなナンバー。「LOVE IS STRANGE」「BODY SNATCHER」へと続く。叫ぶようなシンセの音。つきささるようなギター・カッティング。それらを撫で回すような、ボーカルの福岡ユタカの手つきが妖しい。デジタルと、どこか原始的なものを感じさせるリズムが混然と溶け合う。そして脈打つ。
よく、デジタルな最新機器でどこまで人間的なサウンドを作れるか、という話を聞く。けれどPINKはそんな命題を抱えないだろう。好きな音を使い、好きなことをやる。計算でなく本能で。だから彼らは自分たちの音に対して、とても楽しそうな顔で接している。

ボーカルの福岡は、唐突なほどの笑顔だ。金沢のライブで彼は、丁寧に客席に手まで振ったので、キーボードのホッピーを驚かせた。ホッピーは、ペンライト(!)が似合いそうなこの光景を見て、自分は「タノキン」(死語)のバックでもやってるのかと思ったそうだ。そのホッピーも何かというとキーボードのブースを離れ、前に出たがる。その様は、ボーカリストをくう勢いだ。
めったにソロをやらないPINKだが、(彼らは「フュージョン・バンドではない」のでソロが嫌いだし苦手だ)チョッパー・ベースのソロ・フレーズに岡野は気合いを入れてる。つられて客席の男の子は「光の子」で奇声を発している。陶酔顔のカメは首を左右に振りながらスティックを振り上げる。エラそうにヒジをつき胸を張り、余裕顔でパーカッションを叩いてたスティーブは、次の曲では一転して多くの楽器の山の間を繊細に駆け回る。
音に関して超ワガママな奴らが集まった。それなのにライヴのこのイイ顔だ。表現したい音が順調にイッてる証拠である。カッコよくて、あたり前だ。


怒涛のダンス・ホールと化した横浜新都市ホールの数日後に会ったホッピーと、カメこと矢壁アツノブはもう、「遠い昔のことみたい」と笑う。だってたった4日前・・・・・それでも音楽に関する彼らの血のスピードは相当な勢いで流れているらしい。1か所には落ち着かない。カッコイイもの自分たちが楽しめるモノ求めての足どりは軽すぎるほど。飽きっぽいといってしまえばそれまでだ。これは本人たちも認めるところ。けれど、その裏の貪欲なほどの音楽探求心が・・・・・果たしてお気楽(?)なこの2人の会話から・・・・・わかるかどうか??

―――なんで数日前のことそんな昔に?

カメ:その後、京都と金沢でやって今帰ってきたんですけどね。

ホッピー:なんかその間にいろんなコトがあってね。朝から晩まで忙しいし。早くも金沢ではステージ構成がツアーの末期症状になるしね。3回目にして。

―――末期症状って・・・・・?

ホッピー:地味なモノは廃して、グリグリにはでなモノばかり。フツーじゃ我慢できないの。(笑) ふつうは7~10本やって飽きるんだけど、今回は早い!

カメ:ぜんぜん、飽きっぽいんですねェ。≪ここで、若干遅れて編集部M女子登場。途端に話は途切れる・・・・・≫

カメ:ねっねっ、このヒトKYON²に似てない? 似てるよね。目もととか。

ホッピー:似てる似てる。口元なんか。

M女子:エッ似てませんヨ。(謙遜する)

カメ:だってオレこの間、見てきたばかりだもん!一緒に写真まで撮っちゃってサ。(と、手帳に大事にはさんだKYON²と自分の写真を出して見せる)

ホッピー:矢壁やるあなオマエ。でも俺だって!(同様に手帳からとり出す)

―――どーしたんですか、ソレ?(感心)

ホッピー:レコーディングで一緒だったんですよ!カワイかったあ!

―――・・・・・。(こういうミュージシャンばかりだと、アイドルも大変だ)

開演前の楽屋で。
「撮影イキマス!」の一声に反応はマチマチ。サッと真っ赤なコートをはおったホッピー。スティーブはコーヒーを持ったまま廊下をウロウロ、岡野君はグッと表情をひきしめ、福岡クンは「どうだ!」とジャケットを着こみ、「待って、待って」と矢壁クンはやっと衣裳に着がえる。すでに開演15分押し、ゴメン。

その(2)に続く>>