「TECHII」創刊号(1986年6月号)掲載
最近はレコードでも大活躍のリミックスDJ、藤原ひろし。そして、ビシバシに力入ってるPINKのホッピー神山。PINKの新しい12インチ『光の子/LUCCIA(リミックス)』がとりもつ対談が実現した。これが、モリモリの力強さ。メガ・ミックスのマジな話はもちろん、そのまえに、2人のメガな会話を楽しんでね。
---PINKの今度の12インチは、藤原さんが中心になってやったリミックス・ヴァージョンですよね。で、PINKのメンバーは、まるでタッチしなかったとか?
神山 うん、すべてまかせちゃってる。今回は、進行具合さえ知らなかったという。それはね、メンバーが入ってくると収拾がつかなくなって、また1週間ぐらい延びてしまう、と。(笑)マネージャーも、いっさい口にしなかった。(笑)昨日、たまたまマネージャーと連絡を取りたくて電話をしたら「スタジオにいる」「ん?スタジオ?」電話をかけてみたら、電話の向こうから「LUCCIA」が聴こえてきたという・・・・・。(笑)
藤原 でも、あれ、いい曲だと思うな。ダビングしたトランペット、ミュート・ビートの児玉(和文)さんが吹いてるの。渋いでしょ。
神山 うん、児玉さん、いいよね。けっこう哀愁してる。
---でも、話戻るけど、12インチを作ることは知ってたんでしょ?
神山 うん。そりゃ、知らなかったら問題だよ。
---そ、そうだよね。(笑)
神山 でも、スケジュールを教えると大変なことになるっていう。
---ア・ハ・ハッ、のぞきに来たりして。
神山 っていうか、いじりまわしちゃうという。
---全員が自分を出したがる!?
藤原 PINKは、みんながソロ・アーティストだね。みんな主張が強いから。
神山 お互い仲が悪いですから。(笑)もう最低の性格だから。(笑)
藤原 バンドが長続きする秘訣かもしれない、それが。
神山 音楽的には尊敬してるんだけど、人格的には軽蔑してる。(笑)
藤原 一緒に遊びに行ったりは?
神山 全員でというのはあんまりないんだけど、好きなものは共通しているから、同じ趣味持ってるから何人かで遊んだり。
---ディスコなんかにも行く?
神山 東京にいるときはそうでもないけど、ツアーとかで地方に行ったときはね。そういうときは、けっこう面白がれる。
藤原 グルーピーがいるから?(笑)
神山 ア・ハ・ハッ。札幌でディスコに行ったとき、すごいショック受けたの。その店は、黒人のDJがファンクのドシドシものばかりかけるんだ。
---なんていう店?
神山 シニフェ。
藤原 アッ、その店、ボクが1年ぐらいまえに”営業”で行ったところなの。ミキサーとかなかったからボクが運び屋になって。東京からリミックス用のミキサーを持ってって、使い方とか教えたりして。それからなの、あの店。だから、ボクは、リミックスDJの”札幌の伝道師”!(笑)東京には、ああいう店、あまりないね。
神山 サーファー向けのディスコばかり。
藤原 ”ギャルが踊ってりゃ客が入る”という発想は悲しいね。日本人って、ギトギトした黒っぽさがダメみたい。
神山 それと、日本の音楽番組がいけないんだよね。MTVみたいなのもそうだけれど、歌謡曲の番組もひどい。歌謡曲がなくなればいいっすね。
藤原 うん、それは言える。ヒットチャートに国内の曲がこんなに入っているのは日本だけだもん。外国から見たら「日本はまだ鎖国してるのか?」って言われちゃうよ。(笑)
神山 先進国で、これだけ特殊な音楽状況を持っているのは、日本ぐらいだよね。日本からワールド・ワイドなアーティストが出ていないというのが致命的だし。誰かが突破口を開かなきゃいけないんだ。
藤原 うん”ワープ・ゾーン”を作らないと。
---けっきょく、2人とも、音楽のワープ野郎?
神山 うん。今の状況に満足してないよね、ボクら。
藤原 歌謡曲だってリミックスが中心になると、少しは面白くなってくる。演歌の人がやっても面白いんじゃない?
神山 ア・ハ・ハッ。ドシドシの派手なサウンドで、ヴォーカルがコブシを効かせたりして。
藤原 エンちゃん(福岡ユタカ)のヴォーカルって、そういうノリあるでしょ。
神山 彼の場合は、民俗歌謡っぽい歌いまわしをするでしょ。確かに近いものがありますねー。PINKがダメだったら演歌で勝負できる!?(笑)
藤原 そうか、それだったら、今度の12インチ、B面をカラオケにしておけばよかったね。(笑)