メジャー・デビュー以前の、度肝を抜かれるようなビート感とゴッタ煮の音楽性。
1stアルバム『PINK』の、ポップスとしての完成度の高さとしっとりした叙情性。
PINKはあくまでもダンス・ミュージックを奏でるバンドとしてのポジションを保ちながら、彼らならではの数々のアプローチを見せてきた。徐々に形を整えてきた。
そして2/25に発売された2ndアルバム『光の子』には、1stアルバムの路線を踏まえた上でのより強靭なダイナミズムと、発散される能動的なイメージとスピード感を伴って見事に無国籍な世界が展開される。
しかし、ここまではある程度誰もが想像し得たことだ。彼らなら間違いなくある一定水準の作品を生み出すことは可能なはずだし、自分達のイメージを充分知っているからそれを壊さないで再構成することもできる。
では、彼らにとって新生面が訪れるとすればそれはどういう風になるのだろう?
自分達の現在位置を確認した上での新たなアプローチと方法論。
ここではあえて、2ndアルバムの制作過程をふり返るのではなく、今後の方向性、そして今にも複雑骨折を起こしそうな音楽業界についてを語ってもらった。
重要なのは彼らを取りまく状況に向かって、どう彼らが食いついていこうとしてるか、だ。

all Photos:Hiro Ito(MPA)

というわけで、次にはどういう方向へ進んでいくんだろう?

福岡:遊ぶ部分っていうようなのは前よりもっと増えると思う。すごく欲ばりな話だけど、1枚目にあるようなボトムにくるドーン!という部分ももちろんあるけど、よりカラフルにならないとマズイと思うんだ。
新生面っていうと、例えば僕以外の部分を出せばもう即、新生面になると思うんだよね。だからそれはもう、いくと思いますよ。3枚目、それ以降。ドンドン、ドンドン。

他のメンバーの比重が今後高くなっていく?

福岡:まあ、やっぱり作ってみないとそれは分かんないけれど。とりあえず他のメンバーの比重がどうのこうのいうよりも、もう1回僕なら僕が出したアイデアをさ、メンバー内でブワーッと思い思いに解釈してやるっていうこと自体、そういうこと自体で変わると思うし。
ただ1枚目、2枚目を合わせてとりあえず基本、みたいなものを作りたかったっていうのがあるから、急に変な冒険が出来なかったっていうのがあるよね。3枚目あたりはできるんじゃないかな、と思ってるんだけど。それはまあ当然状況によってっていうのもあるんだけど・・・・・・。
っていうといかにもずっと考えて作ってるようだけど、ホントはそう計画を考えて作ってるわけじゃないんだよね(笑)。ただ、そういうものがあったんじゃないかな、と。特に1枚目なんかはそんなに遊んでいられないなって思ったし。意見、アイデアが出てきて、それを入れるとか排除するとかっていう時にそういうのが判断基準になってたんじゃないかと思うんだけどね。
だから、3枚目はできるといいね。2枚目のA-2(「SHISUNO」)みたいな遊び的なものとかもあっていいし、逆にボトムにくる部分というか、ドーン!とくるのが何曲かあって、あとB-5(「LUCCIA」)とかああいうふうなものがスーッとある。のがいいかもしれないね。あるいはひょっとしてA面、B面を世界を変えちゃうとか。色々やり方はあると思うんだ。もう少し自宅録音の部分を増やすとかね。それでかなりニオイがカラフルになるっていうこともあるし。
1枚のレコードで全部語るっていうのは難しいと思うんだよね、これからのモノはね。特にウチらみたいなバンドは。それこそ2枚組にしてさ、で、かなり世界を変えていくとさ、すごく面白くなると思うよ、ホントに。だから、ある意味で1枚のアルバムに力を結集するっていうことも必要だろうけど、将来的にはさ、低予算で2枚組、みたいな。各メンバーに全部振っちゃって、この面誰担当だとかさ。そうやったらできると思うな、結構。

確かに2ndアルバムは1stの路線を踏襲しつつ、PINK独自の世界を形作っている。しかしながら、ひとつひとつの要素が緻密に絡み合い、細やかな情感の動きとスケールの大きな躍動感の間を巧みに往復してみせる手法としては、すでに完成の域に入った感が無きにしもあらずだ。もちろん音楽的な評価が高まることに異論を唱える気はない。だが、それだけでは音楽的な”職人”の集団と捉えられてしまいかねない。彼らのキャラクターとしての独自性、ひいては人間性までをも今後ひっぱり出そうというアプローチは無いのだろうか?それは非常に難しい問題でもあるわけだが。

福岡:まあ、よく言われるけどね。・・・・・でも、PINKはね、何だかんだ言っても(タレント的な)イメージもへったくれも無く、この状態である程度売れれば、それが一番面白いと思う。”何か独特の位置、変わったポジションにいる人達”っていうかさ。やっぱり何かに当てはめたがると思うんだよね、人は。誰々っぽいとかさ。そうじゃなくて、”こういうものはこういうもの”っていう・・・。それでやっていければいいと思うんだけど。

まあ、ジャンルに当てはめた方が説明しやすいもんね。

福岡:それはもう、PINKの最初のイメージ。ノン・カテゴリーだよ。だってこういうバンド無いでしょ?他に。そういう意味じゃ(タレント性ではない)音楽ファン、みたいな人の期待は大きいんじゃないかってすごい感じるね。

岡野:何のために売れたいかっていう事がハッキリしてくると、自ずと道は開けると思うし。

その②へ続く>>