「できることなら休みがほしい。自分の中の音楽的な考えをたくわえるためにもね」という岡野ハジメの言葉が象徴しているように、86年のPINKは昨年にもましてハードなスケジュールをこなしてきた。
2月のセカンド・アルバム『光の子』のリリースを皮切りに、3月~5月は全国ツアー、5月には12インチ「光の子」をリリース。さらに6~9月は早くもサード・アルバムのレコーディングをおこない、その終了直後にはライヴのために渡英。帰国直後にもBBCテレビのためのギグや、数回コンサートも行った。
しかも、PINKの場合はこれだけじゃない。ハイ・テクニカル集団と呼ばれるプロジェクト的存在なだけに、各メンバーがさまざまなアーティストからレコーディングへのさそいをうけ、かなりの数のレコーディングい参加。たとえば岡野ハジメはご存知のとおり、ちわきまゆみ、ウィラードのプロデュース。ホッピー神山も松岡英明のアレンジや大沢誉志幸のレコーディングなどに参加。そのスケジュールはハッキリいって異常とさえ思える。その中でPINKというグルーブのクォリティも確実に高めているのだからスゴい。
「各メンバーがいろいろなレコーディングに参加することは、ハードなスケジュールであることをのぞけばそのことは今度のアルバムにも明確に結果となってあらわれてるヨ」
岡野ハジメのいうとおり、来月1月にリリースされるサード・アルバム『PSYCHO-DELICIOUS』は過去2枚をしのぐデキだ。ロンドンで”強力なビート感を持った集団”と絶賛されたそのリズム・セクションをよりタイトでシンプルなものとして前面に露出。まったく無駄のないよりポップな作品にもなっている。
すでに日本ではTVCFソングとなったニュー・シングル「KEEP YOUR VIEW」が話題だが、イギリスでのあのスティーブ・ナイの手によってリミックスされたシングル「SOUL FLIGHT」がアフェア・レコードよりリリースされ、これも評判をよんでいるようだ。
「今回渡英はそれなりのプラスになった。やはりあこがれの国にはじめて行ったわけだしね。でも、だからといって今後PINKがイギリスにターゲットをしぼってアプローチしていくということはないと思うな。ボクたちはやはり日本的な音楽をやってると思ってるし、日本で成功しないかぎりはイギリスでの成功なんてあり得ないと思ってるんだ」
つい最近のコンサートでは、休養をとった渋谷ヒデヒロの代役に、なんと大谷レイブンをむかえて演奏というハプニングもあったPINK。87年はさらにハードなスケジュールに追われつつも、また新しい展開を見せてくれることになるだろう。
(山田道成)