先月号のニュース欄では”PSYCO”になってました、スイマセン。
というわけでアッという間に3枚目にまでたどりついてしまったPINK。今回は楽器をそんなに重ねないで、シンプルで曲の良さを際立たせており、ライヴでの音にかなり近づいている。また、楽器の音で埋めつくさない分、歌がグンと前に出てきており、その辺りも今回のアルバムの解りやすさ、とっつきやすさ、の一因かもしれない。シングル・カットされた「KEEP YOUR VIEW」(A-3)は、マクセル・ビデオ・テープのバックに使われていたし、もちろん本人達が登場するプロモ・クリップ(モノクロの画面が秀逸!)でもオナジミの曲だ。そしてこのアルバム中で最も異色な、また、今までのPINKのレパートリーの中でも異色な、「SCANNER」(A-5)が面白い。ほとんどコード・チェンジが無く、リズム・パターンもほとんど変わらずに延々と繰り返されるこの曲は、Pファンク・タイプのグルーヴを残しながらも、ホッピー氏の独壇場である、ねじれ曲ったシンセ・リフやソロがカッコイイ!近田春夫の詞も従来のPINKには無かった新生面を開拓しており、前作でガチガチに固まっていた世界が少しほぐれたみたいで興味深い。とはいえ、1stからずっと続いている、ハードなダンスチューンから抒情的な曲までの振幅を持った音楽性は相変わらずで、後者の中ではおそらく今までのベスト1と思える「SHADOW PARADISE」(B-1)の美しさ、アレンジの的確さは特筆される。につけても素晴らしいのは、吉田美奈子と宇辺セージの詞だ。2nd、1stでそれぞれ誰にも踏み込めない独自の世界を提示してみせただけに、この2人の才能は現在のPINKの言語中枢だ。(岡本)

「Player」1987年2月号掲載