PINKについてはこれまでも色々なことを書いてきたし、これからも書いていこうと思っている。でも、ここでは彼らのことを”日本のロック・シーンに必要なバンド”とだけ書くことにしよう。バンド・ブームとかいうことで、来年には消えていそうなバンドが数多くはびこっている今、PINKの存在はとても貴重なものに思える。
そんなPINKが通算4作目にあたるニュー・アルバムのレコーディングに取り組んでいる。とはいっても、このインタビューを行った時点では、まだ3曲のリズム録りを終えただけという状態。こちらとしてもまったくの白紙状態でのぞんだインタビューだった。元ルージュ、イミテーションのギタリスト、逆井オサムを正式メンバーに迎えた新生PINK。彼らの近況リポートをお読みあれ。
(Interview:Tohru Watanabe/Photos:Takatoshi Shimizu)

---まずニュー・アルバムのアウトラインを説明してくれるかな?

福岡:今回は僕以外のメンバーの曲もピックアップして、ボリュームの大きいものを作ろうと思ってるのね。今のところホッピーが4~5曲で、岡野クンが3曲、オサムが2曲、カメちゃんと僕の共作曲が3曲、そして残りは僕の曲。全部で何曲になるのかはわからないけど、アナログ盤の形式でいうと、1.5枚組になる予定。

---それはCDを前提としているということ?

福岡:そう。CDだと1枚にスッキリ収まるんだよね。時間にすると、60分前後かな?

岡野:PINKの場合、レコードよりもCDの方が売れてるらしいから、それじゃ、僕達もこの辺でCD対応ということを考えよう、と。

福岡:最初は1.5枚組というと、ちょっと散漫になるんじゃないかなって思ったんだけど、今は面白いものができそうな気がする。他のメンバーの”色”が出るわけだから。

---作詞家陣はどうなってるの?

岡野:それは曲によって色々だね。もちろん今回も吉田美奈子サンと宇辺セージ君には協力してもらうし、あとホッピーはサロン・ミュージックの吉田仁クンに依頼してる。僕もくじらの杉林恭雄クンにひとつ書いてもらおうかなって思ってる。

---実際のレコーディングの方法はどんな感じになるのかな?その曲を書いた人がプロデュースもするっていう方法、つまり責任プロデュース制をとるとか・・・・・。

福岡:いや、そこまで明確な方法はとらないと思う。ただレコーディングの方法論はちょっと変わると思う。16チャンネルで録るケースが増えるだろうしね。

---ボーカルは?

福岡:ホッピーが1曲だけ自分で歌って、岡野クンのうちの1曲を岡野クンと僕とで一緒に歌う。あとは全部、僕。

---そもそも今回、他のメンバーの曲をピック・アップしようと思った理由は?

神山:これまでの3枚でPINKの”色”っていうものはある程度確立できたと思うのね。だからこの辺で新たな”色”を出してもいいんじゃないか、と。そういう時期だと思うんだ。ほら、どのアーティストもアルバム3枚ごとに変化してるでしょう?

---いわゆる”アルバム3枚説”ね。

岡野:たいていそうだよね。

福岡:この辺で大きく変化した方が聴く側の人も新鮮だろうし、僕達自身も新鮮だから。

---最終的にアルバム全体を俯瞰する立場の人というと、誰になるのかな?

福岡:いちおう話し合ったんだけど、今のところ特にないんだよね。1曲1曲をすごく完成度の高いものに仕上げて、なおかつ新しいものを作ろうと思ってるくらいで・・・・・。

岡野:とにかく今回は、メンバーそれぞれが好きなことをやろうって感じなんだよね。

---各メンバーの個性が出ればいい、と。

福岡:そういうこと。1曲1曲に全力投球するって感じだね。CDを前提としてレコーディングすると言うと、何かコンセプト・アルバムみたいなものを想像する人もいるかもしれないけど、そうじゃないんだ。いろんなタイプの曲があって、まさに百花繚乱って感じになると思う。

---それじゃ、たとえば岡野クンの曲はどういう感じ?

岡野:3曲ともそれぞれタイプは違うんだけど、1曲は「YOUNG GENIUS」をもっとポップにした感じで、もう1曲は何て言うのかな、インドっぽい(笑)。

---モンスーンみたいな感じ?

岡野:ま、そうとも言える。実際に出来上がったものはかなり違うと思うけどね。他のメンバーの曲を聴いて思ったんだけど、やっぱりそれぞれのカラーが出ているんだよね。僕から見ると、ホッピーの曲はホッピーっぽいし、エンちゃんの曲はエンちゃんらしいなって感じ。その意味では、僕の曲も自分らしいなって思う。ただ、それらがメンバー全員の手にかかると”PINK”って感じになる。だから今回のアルバムも統一感はあると思うよ。

福岡:うん。違和感は感じないはずだね。

---エンちゃんの曲はどういう感じ?

福岡:従来の路線を発展させたもの、つまり詞とメロディーを重視したものと、もうちょっとロックンロールっぽいもの。ま、いろいろありますよ。

---ホッピーさんの曲は?

神山:僕の曲はどれも暗い(笑)。詞の内容が暗いんだ。別にデカダンスというわけじゃないけどね。どの曲も簡単に楽しめるダンス・チューンでないことだけは確か。PINKの場合、「YOUNG GENIUS」や「ZEAN ZEAN」みたいな弾けた曲っていうのは、わりと簡単にできちゃうのね。僕の曲は、それらとは違う。今までのPINKにはなかったタイプの曲だと思うよ。

---逆井さんの曲は?

逆井:僕の曲はどちらもロックです(笑)

神山:彼はいろいろなものを持ってるんだよね。生き字引(笑)。

岡野:何でも弾けるしね。

---でも、曲作りとなると、自分の本質が出るでしょう?

逆井:うん。ロックをやりたいんだ。自分が考えている”ロック”というものをやりたい。

---逆井さんは、PINKに何を持ち込むのかな?自分で考えたことあります?

逆井:いわゆるハード・ロックとは別の”ハード・ロック”。ハードな要素だと思う。

神山:それって、ギタリストじゃなきできないことだと思うんだ。他のメンバーの中にもハードな音を持ち込みたいと思ってる人はいるんだけど、楽器の性質上、無理でしょ?だから僕達も逆井クンにはすごく期待しているんだ。

その(2)へ続く>