日本のロック・アルバムとしては久々に感激した一枚。

元ビブラトーンズの3人に元ショコラータのメンバーなどを加えて結成されたPINKのデビュー・アルバム。
ユニットとしての演奏力もさることながら、何よりも福岡ユタカのガッツあるボーカルが胸を疼かせる。日本のロックのアルバムとして名、久々に感激した1枚だ。アルバムはAB面でかなり印象が違う。スピード感ある演奏でグイグイ押すA面と、スッキリと空間を生かした音作りのB面。僕としては、詩作の鋭さも含めて、B面の方が気に入っている。

強引なフック優先の曲作りはしていないから、数度は聞かないと魅力は伝わらないと思うが、その抑制の仕方こそが彼らの時代感覚なのだろう。シンセの音色にしても、コーラスの処理にしても凝りに凝って、かつ凝ったと思わせない工夫までしてあるという感じだ。だからこそ、⑥や⑧ではボーカルがとてもうるわしく響く。ティーアズ・フォー・フィアーズの新作にも似たバランスとでもいえばいいか。
’80年代版のファンキーなグラム・ロックといえそうな④や、核戦争後の未来をイメージしたかのようなバラードの⑦も魅力的だ。ロックってのは、こうじゃなくちゃあね。
(高橋健)

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「アドリブ」1985年6月号掲載