昨年一年の、PINKの活動の充実度はかなり高かった。2月にセカンド・アルバムをリリースし、その後ツアーを開始、12インチ・シングルをリリースして、秋にはロンドンでギグを行い、シングルがリリースされたことで、海外進出も果たした。そしてCMにも使用されたシングル「KEEP YOUR VIEW」のリリース、サード・アルバム『PSYCHO-DELICIOUS』のレコーディング。12月21日に渋谷公会堂で行われたコンサートは、そんな彼らの充実ぶりを物語るような、ステキなものだった。
シンプルでシャープな色調の照明の中で、自由にはねまわる男達。いつの間にかその世界にひきずり込まれ、ここは都会の真ん中のコンサート・ホールだということなぞは、知らず知らずのうちに意識の外に出ていってしまう。何ともいいがたい宇宙空間、あるいは次元の違う不可思議な空間にぽっかり浮かんで、彼らの発するエネルギーにつつまれているような心地よさ。まぎれもない、PINKだけが生み出す、PINK空間に身をゆだねる。
ゲストの吉田美奈子さんのエネルギーもすごかった、カッコよかった。彼女とのコンビネーションで、福岡さんのヴォーカルも、さらに熱を帯びる。
じわっじわっと押しよせる熱さが、やがてステージから会場中に渦をまく。中盤から終盤へ向かうパワーのうねりは、本当に圧倒されるものがあった。パワー、エネルギー・・・・・どうしてもそういう言葉を使ってしまうけれど、かといって彼らの熱さは、決して、汗くさかったり、スポーツした後のさわやかさ的なものではない。汗を感じさせず、とてもファンタジックで、ある種華麗。常にどこかにクールなものを持ち続けている。ノーテンキに盛り上がればそれでOKっていうのでないところが、彼ららしいカッコよさだ。
アルバムの宣伝コピーと同じになってしまうのがシャクだけど、ホント、サイコーにデリシャス!こんな、バンド、ちょっと他にない。
(角野恵津子)
「ARENA37℃」1987年3月号掲載