若さゆえの激しさも無謀さも、経験済み。アレンジャーとして、プロデューサーとしてそしてプレイヤーとして若手ロック界を裏から支える両巨頭が生み出した作品は、”レコーディングしたい・・・・・”というあまりにも純粋過ぎる欲求から生まれた。その純粋さゆえに、2人のBig Manはとてつもない怪物を生み出してしまったのか。


ルースターズとPINKが解散してからけっこうな時間がたった。今や元・Rの下山淳はアレンジやプロデュースの他にルーザーのギタリストでもあるし、元・Pのホッピー神山はプロデューサーとしてフル回転している。そんな2人がつるもうとしている、って話を聞いたのは半年ほど前。それが今、RAELというユニットのアルバム、という形で実体化した。5月25日リリースの『Birth of Monsters』。この1枚を前に、2人にアレコレ聞いてみたのが今回のインタビュー。取材は下山淳がプロデュース・ワークを進行中のスタジオで行われた。その日はUP-BEATのニュー・アルバムのプロデュースを終えてホッピーが帰国した翌日、だった。

 

ホッピー 「エー、ホッピー神山です。どうぞよろしくお願いします」

下山 「なんだ、それ?」

ホッピー 「低姿勢。パチロク(注:パチパチロックンロール)に登場するの初めてだから。バージン状態で、ていねいな言葉使い(笑)」

---では、初めに。この建物には結婚式場も入ってるってことで、お2人のなれそめから。

下山 「記念すべき”うしろ指さされ組”だ!(笑)」

ホッピー 「アレが4年位前のことですネ」

---ホッピーさん、ルースターズのアルバムにも参加してたよネ?

ホッピー 「うん。『KAMINARI』で参加して、あと『FOUR PIECES』でも弾かせて頂きました。でも、フランス録音の奴は連れてってもらえなくて・・・」

---PINKがラスト・アルバムを出した頃、ホッピーさん「ライブハウスから始めてもいいから絶対にバンドを演りたい」って言ってたと思うけど、その”バンド”がRAELになったわけ?

ホッピー 「それはまた別なの。RAELはあくまでも2人のユニット。バンドじゃない」

下山 「各々の活動がある。バンドを演りたい、っていうのもある。で、それとは別にコイツと演りたいっていうのがあって、それがRAELになったの」

---バンドと呼ぶには何人以上から、っていう定義があるわけじゃないよね。2人だってバンドと言える。そこをあえてユニットと称してしまう理由、とは?

下山 「RAELはバンド・サウンドを追求しない、っていうことでユニットなの。あくまでも2人のアイデアを盛り込むことで作るスタイル。これがバンドとなるとそうもいかなくなってくるでしょ?バンドってメンバーのアイデアが全て採用されるとは限らないから」

---じゃ、RAEL=2人のアイデアをだし合う場?

下山 「そうだネ」

---となると、必然的にスタジオ・ワークが中心になってきたりして。

下山 「うん。これはテクノ、だと思ってるから」

---お互い、そういう試みをやってみたい、っていう時期が重なってRAELになったの?

ホッピー 「というか、いわゆるバンドを演るにはもう少し時間がかかりそうだったから。で、去年の11月頃に、”じゃ、2人で各々16チャンネルのテレコでも買って、自宅録音して、それを持ち寄ってレコード出しちゃおうか?”ってなったわけ。その思いつきがそのまま実現しちゃったという」

下山 「お互いバンドを解散してから2年位たつわけで、とにかく自分達のためのレコーディングをしたい、っていうのもあってネ。だけど、そう思って即スタジオ入り出来るわけじゃないでしょ?だから、まずは各々テレコを買って自宅録音を始めたの。ボーカルとかも自分の家で録ったりして。で、ある程度出来たらデープを持ってスタジオへ行く、みたいな」

ホッピー 「今回、作るの早かったんだよネ。自宅録音に2週間、スタジオで2週間。それで完成」

下山 「ルースターズん時も曲作りのペースは早かったんだけどネ。ただ、あの頃には出来なかったことを今回はいっぱいやってる。ま、逆に、バンドやってると切り捨てなくちゃいけない部分が良さだったりもするんだけど。制約がバンドらしさを生む、みたいな」

---RAELは制約なし?

ホッピー 「バンド的に聴こえてしまうモノは却下、っていう制約はあった。例えば普通の8ビートのリズムが似合いそうな曲でも、そこはなるべく避けるとか」

下山 「あと、必ず1曲に1つはひねくれたことをやる。当然R&Rだ、って曲では生ドラムを使わないとかネ。その辺だけだネ、最初に2人で確認したのは」

ホッピー 「バンドの方はネ、今後2人で演りたいと思ってるバンドのイメージがもう頭の中にあるわけ。だから、RAELではやらないようにして。バラしはなし、っていう(笑)唯一、今回のアルバムに参加しているリズムセクションの2人が今後の種明かしになってる位で」

---詞の方はどう?こちらの制約等は?

ホッピー 「特になかった。いまボクらが考えていること、言いたいことに関しては2人の間で暗黙の了解があったからネ。それに、これが別のボーカリストを立てての録音だったら話は別だったと思うけど、今回は自分達で歌うってスタイルだったんでその部分の心配もなかった」

---詞の中に”新しい安定を求めて”っていう一節があったけど、ここで言う”安定”とは? 安定ってロックでは余り耳にしない言葉だと思うんだけど・・・。

下山 「世間でいう”安定”って、常識の中での安定、だよネ。でも、ここでは、絶対的な安定=パラダイス、ユートピアっていう気持ちで使ってみたの。一瞬、”エッ!?”とか思われる言葉を使いたい、っていうのもあったから」

---多くのバンドの歌詞の中にも、こんな社会から抜け出してパラダイスに行こうよ、的な詞がある。その手合いって、時として、そんなのただのエスケイプじゃん、って感じたりもするんだけど。

下山 「ボクにも逃避願望みたいのはあるよ。でも、それを自分の足元も見ないで言ってるわけじゃないからネ。建設的には歌ってるつもり」

ホッピー 「ボクらが、いま立ってる所から解放に向かっていくのは正しいことだと思う。一般には、一度むりにアンダーグラウンドに舞台を落としてから解放に向かう詞、多いみたいだけどネ」

---裏通りにナイフを持った少年がいる所から始まるパターン(笑)。その方がここは最低、あっちは最高って対比がつけやすいからネ。

ホッピー 「そうそう。でも、実際にはそんな少年はどこにもいない。真実じゃないわけじゃん?地獄を見て天国を見る、みたいなもんでさァ。ボクらの場合はそこを、現実に立ってる場所からパラダイスを見てるってカンジ。で、そこに向かって歩いてる。走らずに、ネ。そうすると同じような考えを持っている人に出会うこともある。だから、こうやっててんでやってたりもするんじゃないかな?」

Photography Shyuichi Maiyama
Text  Kou Imazu
Hair&Make  Masanao Nomoto