前作「PSYCHODELICIOUS」でひとつの形を造り上げた感のあるPINKの第4作目にあたるアルバムが「CYBER」だ。デビュー当時からのダンシング・チューンとリリカル・チューンのヴァリエーションでここまできたPINKが、いよいよ次期展開のための核分裂!?を始めたのか、少なくとも今までには見られなかったエッセンスが楽曲の端々に感じられる。それもそのはず、今回のアルバムでは部分的にせよ、岡野ハジメ、ホッピー神山、矢壁篤信らの楽曲作品が積極的に導入されている。元来バンド、というより個の集合体としての性格の強いPINKにしては、当然!?の感もあるが、ようやく”眠れる獅子”の如く、その全貌の一部が見え隠れしているようだ。
ともあれ、アルバム全体に身を委ねてみると(と言っても私が聴いたのは試聴用カセットですけど)、近頃では忘れかけていたタイム・スリップが味わえる。導入からアップ、いきなりダウン、そののちサイレント、SOS!!、再びアップ、ラストはリアルな希望!?という、アルバムの曲目構成としては、オーソドックスに起承転結という大ワザがあるわけで、しかもCD用ロングバージョン(アルバム1枚半とか?)これはハッキリ言って大いに楽しむっきゃない。
それともう1つの楽しみは、何と言ってもデジタル録音というリアル・フィーリングを駆使したサウンドの情報量の多さだ。エレクトリック・テクニカル・アレンジに関してはおそらくPINKは日本一だろうが、さすがにその聴感上の深みは、思わず前述の大ワザを大ワザとは思えなくしてしまう程に強大だ。こんなところが”CYBER”の由縁なのかしら?
(永田裕)
「Player」1987年12月号掲載