強力な個性の音楽集団、PINKが4作目のアルバム「CYBER」を完成させた。
限りなくぼう張し続けるもっとも現代的な都市”東京”をテーマに、CD対応の66分(LPは2枚組3面)に収められた全14曲はズッシリとした聴き応えがある。今までは出し切ってなかった各メンバーの色を打ち出し、サイケ、グラム、ファンク、ロックンロール、エスニック・・・あらゆる要素が混然一体となってPINK独自の強烈な匂いを放っている。この並はずれた容量の広さがPINKという集合体の面白さだ。プロデューサー、アレンジャーとしても幅広く活躍し、今回3曲の自作曲を担当しているグラマラスなベーシスト、岡野ハジメに話を聞いた。

「今回、サウンド面の統一感とかは全く考えなかった。背景となるコンセプトとして、”今の東京のドラマ”みたいなのはあったけど、それはサウンドにはあまり関係がなくて、PINKの中で起こっている事がすなわち今の東京を象徴してるような感じに捉えてるんで、個人個人のキャラクターを出した方がいいかなってことでね」

通常のLPの40分前後という時間的制約を越えた事で思い切り創作できたと言う。個人的な実験も含めて様々なスタイルのレコーディング方法がとられた。

「僕は絵を描くように音楽を作っていきたいと思ってるのね。今回僕はPINKというフィールドでアーティスティックな方向でもう少し突っこみたいって欲求が強かった。売れる物を作ろうとかは個人的には全然考えなかった。現状では作品の質で売れるって事は有り得ないと思っているから。でも売れなくてもいいやっていうのとはまた違うけど。売れない物は現代において美しくないからね。ただそのため作品が影響されるっていうのは本末転倒だと思うんだ」

さまざまな要素が百花繚乱の、”東京”は、まさにPINKにうってつけのテーマと言えるだろう。

「音楽界の現状も含めて今の世の中に対しては僕らはすごい批判的ではあると思うけど、そんなの間違ってるよ、って言うんじゃなく、面白がるって意味で否定も肯定もしてないって所あるのね。いい所も悪い所もあって当然というか。僕らが住んでる東京も、ストレスとか毒の部分があるからこそ面白いんじゃないかと思うし、PINK自体、人間的にもバラバラだけど、君は間違ってるよって言うんじゃなく、へぇー、そういうのもあるのって面白がっちゃう、別の種類としてね。その辺がすごい東京的だなと思ったりします」

PINKは自他共に認める、まったくケタはずれのバンドなのだ。

(文・野口顕/撮影・鈴木賢治)