”やあやあ、どうも”ってな調子で、オトイレ中のスタジオから、福岡ユタカさんが出てきてくれた。そう!ピンクがオトイレ中なのです。メンバーいずれも筋金入りの強者ぞろいで、ビシッとカッコいいロックで踊らせてくれるピンクの2枚目がいよいよ2月25日に出るのです。
10月中旬にスタートしたレコーディングが、トツゲキした日(12月2日)にはすでにトラック・ダウン。今回はほぼ全曲レコーディング前に作られた新曲で構成されているそうだ。

「前回がわりと力入ってるっていうか、ある程度たまってたもんを全部はき出したって感じで、2枚目はもう少しポップなものでって考えてる。基本的なコンセプトとか思ってることは、わりと1枚目で出てるような気がするのね。だから今度はテーマを同じにして、切り口を変えてみた、みたいな感じでね。いろんな曲入ってるけど、1枚目よりはすごくポップで明るくなってると思う。前よりはけっこう気軽に聴けるんじゃないかな。前ほどヘビーな詞もないし。ヘビーな詞をずっと歌い続けていくっていうのは、ちょっと難しいね」

今回は作詞陣に吉田美奈子さんが加わっているのも話題のひとつで、美奈子さんには2曲書いてもらったそうだ。そのうちの1曲は ”2日後にほしい” などと無理もいったらしいのだけど、やっぱり美奈子さんの詞はサイコー!と福岡さんは満足気だった。

「僕、自分でいいたい詞もある程度あるんだけど、そればっかりだとワン・パターンになっちゃうから。美奈子さんに頼んだ時はいろいろ問答して、光はどんな具合?って美奈子さんが聞くから、こんな具合とかって全部イメージを伝えてね」

できればもう少し時間がほしいと福岡さんはいうものの、まあまあ順調なレコーディングで、今回もエスニック風な香りがけっこうあるとか、バンドっぽくしたいからコンピューターはあんまり使ってないとか、断片的だけどその形がほの見えてきて、段々期待がふくらんでくる。中でも興味深いのは、たぶんアルバム・タイトルになるどろうという”光の子”の話だ。

「最初はラブ・トゥリーズっていうタイトルにするつもりだったの。で、ジャケットは植物でいこうと思ったんですよ。植物の葉脈だとか、わりと自然現象をテーマにしてやろうと思ったんだけど、2転3転してデザイナーの人が、エジプトかオリエントかどっかあのあたりの石像で女の人の顔なんだけど見ようによっちゃ子供の顔にも見える写真をジャケットにして持ってきたの。それ見たとたんに、その時かいてた「光の子」っていう曲とバシッと合ってね。その曲は1枚目ではちょっと出てこなかった感じの曲なんだけど、わりとアップ・テンポでね。光っていうか素粒子っていうか、ちょっとSFっぽいんだけど。その『光の子』がやっぱりタイトルには一番いいだろうなと思って。ラヴ・トゥリーズっていうのもいいんだけど、もうちょっとポジティブで攻撃的なものがほしいなと思ったから。ただ、光の子っていうコンセプトだと、そこからちょっとはみ出る曲もあるんだけど、別にいいやと思ったの」

光の子―――そこから連想するのはキラキラしてて明るくて、何か前向きな未来を感じさせてくれるようなもの。言葉自体は単純なんだけど、すごくイメージが広がって奥の深さを感じさせてくれる言葉だと思う。それはまたピンクのロックにもつながるような気がするし、まさにはまり役ってところだ。

12月に東京・ラフォーレ・ミュージアム飯倉800で行われたライヴでもこのアルバムの中の数曲を披露、福岡さんのいうように、ポップかつバラエティーに富んだ曲達だった。全9曲が8曲に短い曲が1曲プラスされるというアルバムから、シングル・カットもあるそうだ。

「とりあえず2枚目は売りたいですからね。カッコよく書いて下さいね」

福岡さん、カッコよく書けたかなあ。

(レポーター/カドノ・トツゲキ・エツコ)

 

「ARENA37℃」1986年2月号掲載