1枚目がライヴで育まれてきた曲がほとんどだったのに対し、今回はほぼ全曲が新たに書き下ろされた曲だ。基本的には1枚目と同じ路線をとってはいるが、曲調の明るいものが多い。それもヴォーカルがかなり全面に出ているせいもあってか、正攻法で詞の世界を伝えようとする姿勢がそこに見てとれる。
1枚目で独自の詞の世界を垣間見せた宇辺セージの、鋭角的なナイーブさ、とでもいった感覚ももちろん興味をそそられたが、今回のA-3、4、B-5で詞を提供している吉田美奈子のシュールなドラマ性も見事に無国籍で、不思議な雰囲気を醸し出している。
そして、全体にみなぎるスピード感。この、スピード感という点では1枚目を凌いでいるといっていい。それも音と言葉の織りなす空間の密度が少しもバラつくことなく、最後まで濃縮されたイメージがハイ・スピードで連続していく。未来、異国、少年、女、海、星・・・。映像を喚起させることこの上ない物語設定と、その世界を表現するにふさわしい力量を持ったアーティスト、という意味においてPINKは他に類を見ない優れた音楽集団といえる。
ただ、あえて言わせてもらえば、あまりにキレイキレイに仕上がっているため、彼らがメジャー・デビューする以前に持っていた、海のものとも山のものともつかない猥雑さ、下世話さ、といったものがかなり薄まってしまったという感が無きにしもあらずだ。ある程度洗練されてくるとそれもしょうがないことだが、やはりもっと下半身に響いてくるものが無いと、消毒済みの音楽になってしまいかねない気もする。その辺を3rdアルバムはどう克服してくれるのか、非常に興味がある。
(岡本 明)

「Player」1986年3月号掲載