AS A PLAYER

プレイヤーとして見た場合の各メンバーは無論ヘタであるとは思わないが、無類のテクニシャンでもない。PINKをテクニカルなチームと考えるのは全くの誤解で、テクニック信仰に対してこれほど距離をおいたバンドはなかなかない。「テクニックなんか奴隷だ」という有名な言葉があるが、PINKもテクニックへの愛情は見事に薄い。

岡野 「僕はちわきさんの所でやってる時はプレイヤーとしての主張なんてないわけ、一切。だからなるべくベースは弾きたくないのね。いや、ベース自体好きじゃないんですよ僕は。だってずーっと弾いてなきゃいけないし(笑)、疲れるんですよ。もともと愛してないんですベースなんて。ところがPINKでやってる時はプレイヤー的な要素の方がむしろ強い。そういう時はね、変わった立場を求めるの。ベースがベースらしくないあり方を追求するのそれが面白い。やっぱりあまり愛着がないからこそできるんじゃないかと思うけどね。---高校生のときにグラム・ロック・バンドみたいなのを同じクラスの友達とやってて、僕は最初ギターになりたかったわけだ。リードを弾いて目立ちたかった。でも弾けなかったからベースやれとか言われて「嫌だなあ、こんなモクモクしてて、つまんねえな」と思いながら、いつかはギタリストに転向してやろうと思ってたんですよ。ところがそうこうしているうちにスライ・ストーンが出てきちゃった。それにラリー・グラハムとか新しいアプローチをするベーシストが続々出てきちゃったでしょう。これはギターよりも目立つわ(笑)、と思って、ベーシストになっちゃった。もし、ギターをやってたら、ひょっとすると今頃ヘヴィメタ・ギタリストになってたかもしれない(笑)」

ホッピー 「この曲は好きじゃないってのがあったとすると、最終的なコーディネイトとかはやめて、プレイの方で変な風にやってやれって、自己主張する(笑)。今回もこれは嫌だなあというのがあって、それは手を抜きたくなっちゃって、ポンポン入れときゃいいかなあって(笑)。そしたらね、エンちゃんはね、あまりの虚しさにね、キリングタイムの文ちゃん呼んできてね、なんか民族楽器いっぱい弾かせてね、オーバーダビングしてね、そしたら雰囲気出ちゃったのね(笑)。ヤバイ(笑)。チクショウカッコ良くなってマズいことになったなってのもあったし、でも良かったなって気持ちもあったしね、気持ちが複雑に動くんですよ(笑)」

福岡 「もともと僕の歌は唱法がどうだとか、ウマいとかいう意味じゃなくて声そのものが一番の特質ですからね。つぶれちゃったりダミ声で歌うようなタイプじゃないでしょ。それで喉があんまり強くないからスケジュールがつまってると、今もう、ぶれちゃってますけど・・・・・。だからボーカル・コンディションには気を使いますね、一番。ただ僕はボーカリストとしてのアイデンティティーよりも、もっとトータル的なものだから、いいレコードを作るとかそっちの方が強い。ボーカリストとしてうまく歌うとかシンガーとしてどうのとか、そういうつもりはないし。ボーカリゼーションで面白い事をやりたいってくらいで」

 

THEORY OF PINK

PINK・サウンドをきいてまず思う事は、ベース、キーボード、ボーカルの複雑なからみ合いである。まるで野放しにされた獣が争い合っているような、非常にたくましい自己主張がそれぞれに感じられる。ただ、これこそがPINKの個性と言い切ってしまうのか、それとも整理していくべき問題なのかは判断に苦しむところだ。しかし、無秩序なパワーの集合、離散はバンドが未だ成長期にある事を示している。

ホッピー 「PINKの場合、僕らがサウンドで一番求めているものは、最終段階が見えてるって事じゃなくて6人がやっていくうちにそれぞれが思いもよらない方向になって変わっていくっていうナルホドナみたいな面白味なのね。僕らはお互い性格的には軽蔑し合ってて嫌いなんですけど(笑)、音楽的には尊敬し合ってそこでつながってんですよね。思いがけない演奏を相手がしてきた時に自分ももう一個なんかやろうかなって気になるでしょ、そこが気持ち良くてね。あまりにもみんな思っている事が違いますからね、PINKの場合。それが一つのものになっていくよりはバラバラのまま、PINKってものを頭において一つの作品に向かっていった方がいいような気がする。まとめるんじゃなくて」

福岡 「僕は各人の反応パターンは良くわかってる方がいいと思いますね。でも他のバンドに較べれば無関心な部分が多いんじゃないかな。ベース・ラインも音数多いしね。だから音数を減らすのが一番難しい。みんな意識的にはそう思ってないのかもしれないけど。ただ曲を全体的に見る目ってのはだんだんできてきてると思うから。ベースはベースだけ、キーボードはキーボードだけっていうんじゃなくて全体的な目ってのは持ってきたと思う。もう3枚目でしょ。向こうの出方もだいだいわかってるし、まして僕の書いた曲なら僕の曲に反応するパターンってわかってるから」

岡野 「よくね、PINKってね、緻密なアレンジがどうのこうのって言われるのね。でもね、ホントは肉体的なのね、ウチのバンドのアレンジって。それは考えてできることじゃないから。たまたまそうなっちゃってんだから。PINKがオーディナリー・ポップとして受け入れられる要素はすごくあると思うのね。だけど注意してきくとすごく変なのよ。変でしょう?例えばトラック・ダウンの時に一人一人をソロにしてきいてみると、これが曲とは全然別のものになっているのよ。だから瞬間瞬間のトータリティーってないの。瞬間はすごく変な構造になってて、でも時間の流れできいてみるとそんなに気になんない。その辺はやっぱりアメリカン・ポップスに影響を受けた人達と違うなと思う。アメリカン・ポップスはタテの構造が美しいというか和音の音楽だと思うのね、基本的に。

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