姿を現した瞬間に、ビビッとくるバンドはそう多くはない。たいていの場合、演奏が始まって、じわーっと伝わってくる。

PINKは存在自体がかっこいい。ライヴ・インで観たときも、ラフォーレ・ミュージアムで観たときも、登場の瞬間のオーラにたちすくむようだった。ドク、ドク、ドク、ドク、まるで心臓のようなリズムで鳴りだした。”光の子”の誕生を感じさせる、おごそかで神秘的なオープニングだ。ごく薄いステージの黒いベールに、光の風車がひとつ、ふたつ・・・と回り始め、中央にPINKのロゴ文字が映し出される。それはかげろうのようにメラメラ。強く主張するでもなく、なんとなく不思議な現象だ。1曲めは当然「光の子」。

ベールがはぎ取られ、メンバーが姿を現すと、同時に客席も立ち上がる。が、いつもと違って火花が散るような感じがしなかった。あまりにも神秘的なオープニングに、既に心ここにあらず、だったからに他ならない。

前半はダンサブルな曲を、あの独特で強力なビートで飛ばしていく。上下2段に組まれたわりとシンプルなステージに、7色の光がゴージャスに降り注ぎ、あおり上げる。ライティングの勝利だ。すごい!が、はっきり言って6人を包みこんでしまったみたい。中盤で福岡さんがギターを弾きながらじっくりと「LUCCIA」を聴かせるあたりになるまで、メンバーの個性的な魅力がいまひとつ伝わってこなかった。

しかし名誉挽回後半戦。その盛り上がり方といったら、異常なもん。サンプラの床はたちまちニューヨークのナイトスポットのダンスフロアと化し、サウンドはいやらしいほど肉感的で、腰にビシビシくる。女ってこういうのに弱いのよね。メンバー1人1人が異光を放ち、からみあうステージ。”シンガーとそのバック”というのではない本当の意味でのロック・バンドのコンサートだった。

(文/森山千佳子 撮影/ヒロ伊藤

■演奏曲目■
①光の子 ②ILLUSION ③ISOLATED RUNNER ④GOLD ANGEL ⑤日蝕譚 ⑥HIDING FACE ⑦青い羊の夢 ⑧SOUL FLIGHT ⑨LUCCIA ⑩DANCE AWAY ⑪星のピクニック ⑫RAMON NIGHT ⑬DON’T STOP PASSENGERS ⑭砂の雫 ⑮YOUNG GENIUS ⑯ZEAN ZEAN ⑰HINEMOS


※アンコール
①PRIVATE STORY ②MOON STRUCK PARTY ③DON’T STOP PASSENGERS