日本が誇るテクニカル・メタ・ポップ・バンド、PINK。1986年にはロンドンでのレコーディング、ライヴも成功させ、87年にはさらなる展開を見せてくれそうだ。バンドの要、福岡ユタカと岡野ハジメがPINKを公開!
渡英に加え、メンバー個人の活動など、大車輪の活躍だった86年のPINK。昨年11月からビデオ・カセットのCMイメージ・ソングとして登場している「Keep Your View」を含むサード・アルバム『Psycho-Delicious』を、この1/28にリリース、2月末頃からは全国ツアーも予定されている。
「この1年でいちばんの出来事は、やはりイギリスでのライヴが成功できたことですね。業界関係者向けのギグだったんだけど、日本から来た、初めてのオリジナリティを持ったポップ・バンドというふうに認めてくれて。それと、3/25発売の12インチ「Traveller」をスティーヴ・ナイにミックスしてもらえたし。当初はアルバムもやってもらうはずだったんだけど、時間の関係で今回は見送りになって残念」福岡ユタカ。
この他にも、BBCやラジオでのギグのオンエアや「Soul Flight」(英語版)の英国リリースを済ませ、さらに今年、「Young Genius」を12インチ、7インチともにイギリス発売する。
PINKのメンバーのPINK以外での活動も、ここ1年はきわだっていたようだ。特にベースの岡野ハジメは、ちわきまゆみやウィラードのプロデュースも行っている。
「肉体的にはそうでもないんだけど、精神的余裕がなくて仕事に追われると、その場その場で精一杯全部だしちゃうみたくなって、ひとつのことを先を眺めながら深くゆとりを持ってできなくなる。こんなのを続けてると中味がカラッポになるし、今年は初めの頃に充電のための休養をとるつもり」岡野ハジメ。
「でもPINKってスタジオ・ミュージシャンの集まりとカン違いされることがあるけどみんなただのスタジオ・ミュージシャンとして、他のプロジェクトに加わることはほとんどない。岡野もPINK以外でベース弾いたのは、この1年では皆無だし」福岡。
「これからは金や期間とか制作のこと全部やる本当のプロデュースがやってみたい。低予算でいいものつくる自信あるし」岡野。
またPINKは、実質1年半で3枚というハイ・ペースのアルバム制作をしてきたわけだが、最新作は過去2作の延長上にあって、音はよりよく整理され、かつメロディアスになっている。
「13曲を基本的な録音まで済ませて、そこから9曲を選んでアルバムに入れました。今回はコンセプト・アルバムではなくて、ベスト盤的に1曲1曲がどれもおいしいという内容です。だからPsycho-Delicious。それに、Psycho-Deliciousは、Psychedelicの語源なんですよ」福岡。
「今度は、CDを意識して音をつくったし、ジャケットもCDサイズで効果のあるものにしました。もちろんデジタル録音」岡野。
そして、より多くの人に聴いてもらうために、今までのハードなイメージから、キューピーのポップなイラストをジャケットに使っているそうだ。
これからの展開については、
「海外進出より、国内での成功を最初に狙うのが現実的でしょうね」岡野。
「PINKは十分オリジナルでポップだし、必ず売ることができると思う。何年先に聴いても面白い音楽だし」福岡。
日本語の歌の美しさを追求し、それを肉体的サウンドと融合させたところにPINKの特徴があるのだが、やはり国内市場の攻略が第一の課題となる。
今年に向けては、まず「PINKを売りたい」ということ、そして「以前みたいにセッションもやってみたい」福岡。
「やりたいことのアイディアもいくつかあるから、じっくり構想を練ってみたい」岡野。
というように、ハード・スケジュールの疲れを感じさせないクリエイティヴな活動声明が次々に飛び出してきた。
また各メンバーとも、活動の中のPINKの比重を一層大きくするそうであり、87年がPINKのジャンプ・アップの鍵となる年だという予感がする。
(取材:本荘修二)
キワドイ色彩感覚が突き刺さる!!
昨年はロンドンでのギグを体験、また、スティーヴ・ナイのリミックスによるシングルを、イギリスでリリースしたPINK。それによって、新しいステップを踏んだともいえるこのグループが、そのいそがしいスケジュールの中で、6ヶ月もかけて制作したのが、この3枚目のアルバムだ。
年末近くになって、ギターの渋谷ヒデヒロが突然休養。その代役に元マリノの大谷レイブンを加えてライヴ活動。ちょっとしたアクシデントとハプニングも生んだPINK。しかし、今回のアルバムを聴くと、このグループが’87年には、さらになにかをしでかしてくれそうな気がする。
前にもまして無駄なものを取りのぞき、ひたすらタイトでパワフルなビート感を形成する岡野ハジメのベースと、矢壁アツノブのドラム。イギリスでも大絶賛されたこの強力なリズム・セクションを柱に、PINKは日本人ならではの感性を十分にいかした、独立したロックを生み出している。しかも、さらにその根底にあるものは、あくまでもポップだ。
現在のTVCFソングにもなっているA③を始め、そこには極彩色ともいえるカラフルな旋律が存在。それが例のビート感あふれるサウンドとドッキングすることで、PINKの特異な音楽スタイルが完成される。そのことを、より前面に押しだせるようになったところが、今回アルバムで成功した部分だろう。さて、次は・・・・・・
(山田道成)
「Rockin’f」1987年2月号掲載