アレンジにプロデュースにと大忙しのホッピー神山は、ジムに通っているのだそうだ。やはり体力が大切?
「そうですねー。体力あれば、たいていのことはクリアできますからねー。スタジオ?アレは力仕事じゃないですから。僕のやってる仕事の中じゃ、ピンクが一番大変ですね。僕も含めてみんなワガママですから。人のいうこときかないでしょ」
このラクな感じが多数のスタジオ・ワークを消化する要因かもしれない。とまあいった具合に始まったインタビューだったが、いきなり「ホッピーにとってカッコいいものとはナニか」ときいてみた。
「カッコいいものねえ。やっぱり誰が見ても理屈抜きでナットクするものじゃないですかねえ。アーティストでもなんでも、自分の言ってることややってることが実際ちゃんと絵になっててね、それが自然に人を説得する力があるようなものね。回りくどいものとかはダメですね」
それまでの雑談に比べると意外なほどにキッパリと、スラスラ彼は述べ始めた。
「ただポップなだけじゃなくて、例えば音楽でもね、全然何も知らない10代の少年少女たちにもいいと思わせる、そこまでの説得するものがないと、カッコいいとは思えない。アーティスティックなものはなくちゃいけないと思うけど、それが僕がいつもやるのは、なるべく少年少女にもわかるところも作ってね、それでマニアックな人にも理解されるようにって。それって両極端だからね、トリック使わないと両方は納得できないですね。ちょっとどっちかに寄るとかどっちかの人だけになっちゃうから。日本でアーティストなんかでも、考えてることの奥がない人が多いでしょ。そこまでやる必要がないからなんだけど、そういうことを頭に持ってやってる人が少ないから同じことの繰り返しでね、本当にカッコいいもの、長続きできて、10年後でもカッコいいと思わせるようなカッコよさをやれる人間がなかなかでてこないの」
両極端なものを併せ持つこと、これほど難しいことはないと思うが、
「ロック・スターであって、アーティストじゃなくちゃダメでしょう。芸術家とかいうと何か地味な感じになってしまうけど、オジサンオバサンでもいいから、いいことやってれば、みたいに思ってるけどね」
確かに本当にカッコいいロック・スターは芸術家たりうるし、だからアーティストと呼ばれるミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイが現役で第一線で活躍しているような存在を彼は「ひとつの例」だと言う。
そんな彼がナゲくのが、コンピュータの出現。これまた意外に思うが、
「僕は新しい機械が出たからって、そんなに熱心にさわったりしないんです。コンピュータものが出てきてからって、音楽じゃないところで音楽が作れるようになっちゃったから、その場で終わってしまう音しか出てこなくなって、それでいいとみんな思ってるから困りますよね」
スタジオでも言葉にしないまでもこうした態度で、ついガンバルため、
「僕がやると何も知らない新人もソノ気になるからダメだって言われるんですよ。でも好きにやらせてくれなきゃ帰りますって言って始めるから」
このガンコさが彼ではあるが、夢は
「南の島を買って、ジミ・ヘンの『エレクトリック・レディ・ランド』の中ジャケみたいなウチ作って住みたいですねぇ」
体力作りは自然に還る時のための用意?
「僕、音楽は二の次ですから。人生でいちばん大事なのは、ラクすることですね。ラクしてお金を手にいれるのが一番ですよねー。そうならないから、しょうがなくて二番目でやってるってことですね。やっぱり、自由と快楽。これが大事ですよね」